当院では、胸部レントゲン、64列マルチスライスCT、MRI(1.5T・32ch)、アイソトープ検査、PET-CT、腫瘍マーカー、喀痰細胞診、気管支鏡、蛍光内視鏡、CTガイド下経皮肺生検やハイビジョン胸腔鏡(内視鏡)などを用いた診断および手術を行っております。

20歳代の若年者に多い良性疾患である自然気胸や肺良性腫瘍、縦隔腫瘍等に対しても、手術適応がある場合には、より安全確実な高画質ハイビジョン胸腔鏡(内視鏡)下手術を標準術式としております。その胸腔鏡(内視鏡)は、従来の開胸手術と比較し低侵襲(痛みが少ない)かつ美容的である胸腔鏡下手術により、早期社会復帰も可能で、病気を患っている患者様はもとよりご家族にとっても、手術後のキズにおける美容上の精神的ストレスが軽減し、手術後の痛みなどの身体への負担がより一層軽くなり、より精神的・肉体的負担の軽減につながることは、大きな朗報と言えると思います。

ハイビジョン胸腔鏡(オリンパス VISERA PRO)

ハイビジョン胸腔鏡(オリンパス VISERA PRO)

ハイビジョン胸腔鏡下手術(巨大肺のう胞)

また侵襲の小さなハイビジョン胸腔鏡下手術のメリットを生かし、合併症のある患者様・低肺機能の方・お年寄りなど、従来の手術方法では手術適応にならなかった患者様でも安全に手術を受けることが可能となりました。


胸腔鏡手術(肺がん)

呼吸器外科部長 宮島邦治

近年の医療機器の進歩に伴い、患者さんのからだにかかる負担を減らした内視鏡(ないしきょう)を用いた手術が幅広く提供できるようになってきました。

これまでも内視鏡下治療として、胃がんや大腸がん、肺がんなどの早期がんに対して胃カメラや大腸ファイバー、気管支鏡などの内視鏡ファイバースコープを胃や腸などの消化管や気管支(きかんし)に挿入して行う手術やレーザー治療(PDT↗)が行われてきましたが、たいていは局所麻酔(きょくしょますい)で済みますし皮膚(ひふ)も切りません。

これらの内視鏡下治療とは別に1990年代初頭より、さらなる医療機器の進歩によって現在、高性能な内視鏡用の手術器具や4Kなどのハイビジョンモニターも開発されました。その結果、ハイビジョンモニターにつながれた細い望遠鏡のような胸腔鏡(きょうくうきょう)と言われる内視鏡を小さな傷(きず)から胸の中に入れて胸の中をハイビジョンモニターに映し出して手術ができる胸腔鏡(きょうくうきょう)手術が始まりました。今では全身麻酔(ぜんしんますい)中に皮膚の小さな手術の傷だけで、肋骨(ろっこつ)を切ったり大きく開くことなく(図-1・2)、肺がんを治す根治(こんち)手術を行うことができるようになりました。これまでは、からだへの負担が大きかった肺がんの手術も現在ではより負担が少なく、内視鏡によって臓器(ぞうき)が大きく見える拡大視の効果により、精密で出血が少ないより安全な手術ができるようになりました。

また、皮膚を切る傷が小さいので手術後の痛みが少なく、見た目も傷が小さいので美容的にも優れています。そのため手術後の回復が早く入院期間も短くすみ、早期の社会復帰が可能であるのも胸腔鏡手術の特徴の一つです。

肺がんの手術方法

これまでの肺がんの手術において基本となっていたのは、直接目で見ながら手術を行う開胸(かいきょう)手術です。開胸手術では、背中からわきにかけて皮膚を約15~20cm切り、通常1~2cmしかない肋骨と肋骨のせまい間を大きく開いて、外科医の手を直接胸の中に入れて手術を行ってきました(図-1)。そのため、傷が大きいだけでなく、手術の後の痛みが強いのが欠点でした。これに対して胸腔鏡手術では、わきの下に3~4か所皮膚を小さく2~3cm程度切って、小さな傷を開かずに肋骨と肋骨の間から胸のなかに胸腔鏡を入れ、胸の中をハイビジョンモニターで映し出します。さらに内視鏡用に開発された特殊なハサミや電気メス、鉗子(かんし)などの手術器具を別の小さな傷から胸の中に入れて胸の外からこれらの手術器具を操作して肺がんの切除手術を行います(図-2)。

胸腔鏡手術のメリット

  • 手術の傷が小さく、美容上も優れている。
  • 手術後の痛みが開胸手術より軽い。
  • 手術からの回復が早く、入院期間も短縮される。
  • 手術前の生活への社会復帰が早い。
  • 良性腫瘍や気胸(ききょう)、縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)などの手術でも行える。

身体への負担が少ないため、体力の衰えた人や高齢者でも手術を受けることができるなど数多くの利点があります。

胸腔鏡手術のデメリット

  • 直接触ることが出来ないので、手術の難易度(なんいど)が高い。
  • 開胸手術より手術時間がかかる。
  • 進行した肺がんの手術には、行えないことが多い。

などの欠点もあります。