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手術は肺癌に対する有効な治療法の1つですが、手術の一番のメリットは根治を望める治療法であるという点です。
肺がんのステージは進行度により,ステージ1から4まで分かれますが、通常、手術の適応となるのは、ステージ1から3の一部までです。
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肺は、胸の中に左右2つあります。
右側はさらに上葉、中葉、下葉の3つの肺葉に分かれ、左側は上葉と下葉の2つの肺葉に分かれています。
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また、左右5つの肺葉は、右側は10の区域、左側は8の区域に分けられます。
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手術適応のある肺がんが見つかった場合、「がん」の広がりや患者さんの体の状態などによっては、切除する肺の範囲が異なることがあります。
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肺がんの手術は、5つの肺葉のうち「がん」のある肺葉と周辺のリンパ節を切除する方法が標準手術です。
肺がんの場合、病期I期の早期がんであっても約15~20%はリンパ節に転移していると考えられるので、がんが広がっている危険性のある周辺のリンパ節も切除します。肺は、全体の約20%を摘出します。
また、がんの広がっている範囲によっては、片方の肺全体を摘出することもあります。
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肺がんがごく早期に見つかった場合や患者さんの体の状態や呼吸機能などによっては、切除範囲を狭くした区域切除や部分切除などの「縮小手術」が選択されることもあります。
肺がんを肺の区域単位で切除する「区域切除」と、がんがある部分のみをくさび形に切除する「部分切除」が「縮小手術」です。
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上図のような赤い左肺上葉の肺がんでは、一般に左肺上葉 (薄い黄色と紫の部分)を切除しピンク色の左肺下葉のみ残る左肺上葉切除術が標準術式ですが、肺がんを肺の区域単位で切除する区域切除では、薄い黄色の区域だけを切除し紫色の区域とピンク色の左肺下葉の肺が残り呼吸機能が温存されます。
2022年に日本(JCOG0802試験)や北米(CALGB140503)から、一部の早期肺がんでは「区域切除」や「区域切除を含む縮小手術」でも根治手術が可能と報告され、できるだけ呼吸機能が温存ができる縮小切除が広がってきています。
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また、CTで肺がんがうすいグレーに映る「すりガラス陰影」と呼ばれる早期肺がんでも、ほぼリンパ節転移がないので縮小手術の適応となります。
最近、国内や海外から一部の早期肺がんでは、「縮小切除」でも根治手術が可能と報告されています。
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肺がんの手術は全身麻酔で行われますが、ほとんどの患者さんは手術の翌日から歩いて食事もとれます。
これまでの肺がんの手術方法の変遷についてお話ししたいと思います。
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従来からある開胸手術は、背中側から下方向に約15cm切開し、開胸器を使って肋骨を押し広げて直接目で見て手術をします。
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小開胸手術は、わきの下に約8cmの切開をおき、肋骨を切らずに内視鏡を併用するハイブリッド手術です。
腫瘍が大きい場合やリンパ節転移がある場合などは、より安全で確実な手術として行われています。
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手術器具の進歩により、最近では胸腔鏡下手術が主流となってきました。
胸腔鏡下手術とは肋骨の間を2㎝ほど切開し、そこから胸腔鏡と呼ばれるCCDカメラを取り付けた器具を胸腔内に入れて胸腔内の様子をハイビジョンモニターに映し出して画面を見ながら行う手術です。
胸腔鏡下手術は、皮膚や筋肉の切開の長さも小さいため、術後の疼痛が少なく術後の回復が早いです。
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当院のほとんどの患者さんが受けている胸腔鏡下手術は、5mmと2cmの小さな切開を4か所あけて、胸の中に「胸腔鏡」というカメラと手術器具を入れてハイビジョンモニターを見ながら行う手術です。
小さな切開で手術するため手術後のきずあとも綺麗で、痛みも少なく回復も早いことが特徴です。ただし、手術中に高度の癒着やリンパ節転移などが確認された場合には皮膚切開を延長することもあります。
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最近、脇の下の3~4cmの切開をひとつだけおいて手術をする単孔式胸腔鏡手術でも、肺がんの手術が安全に行われるようになってきています。
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実際の単孔式胸腔鏡手術では、4㎝の小さな切開1か所だけから胸腔鏡というカメラといくつかの手術器具を胸の中に入れて、体の外にある4Kハイビジョンモニターを見ながら手術を行っています。
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単孔式胸腔鏡手術は、4㎝小さな切開1 ヶ所のみで手術を完了するので、外来での実際の創部の様子を見ても小さな傷口が1か所だけなので整容性に優れています。
また、患者さんにとっての一番のメリットとしては、手術後の痛みの軽減が挙げられます。
肺がんも早期に発見できれば、根治が可能な病気ですので、検診で異常が見つかりましたら呼吸器の外来をご受診ください。
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