診療科のご案内

胸の中心にある、左右の肺の間にある部分を縦隔と言います。

その縦隔の内に生じる腫瘍の総称を、縦隔腫瘍と言います。

縦隔腫瘍は、胸腺腫や先天性嚢胞、神経原性腫瘍など、発生部位によって色々な種類の腫瘍ができます。2008年胸部外科学会の手術例の集計では、胸腺腫(36.8%)、先天性嚢胞(16.2%)、神経原生腫瘍(11.6%)、リンパ性腫瘍(6.4%)、胸腺癌(5.8%)、胚細胞腫瘍(5.6%)、縦隔内甲状腺腫(3.1%)の順で頻度が高かったです。
縦隔腫瘍には、悪性のものと良性のものがあります。

縦隔腫瘍は、多くの場合は無症状なので、健診などで偶然発見されることも多いですが、腫瘍が大きい場合や、周囲の臓器まで広がった時は、胸の圧迫感、痛み、息苦しさ、咳、声のかすれなどの症状がみられことがあります。
縦隔腫瘍は一般的に比較的まれな腫瘍です。
腫瘍の大きさが小さい段階では無症状のことが多く、約半数は胸部エックス線やCT検査で偶然発見されます。無症状のものの約80%は良性であると言われています。

縦隔腫瘍の診断をする際には、まず、胸部レントゲンやCT、MRI、エコー検査などの画像診断が行われます。

腫瘍によっては、発生しやすい性別や年齢に特徴があり、これらの情報も診断には重要です。

腫瘍の種類によって血液検査で特徴的な異常を示すものもあり、血液検査で腫瘍マーカーを測定することにより腫瘍の種類が推定できることもあります。

時には、診断のために、CTやエコーをしながら針で組織を採取することもあります。
しかし、画像検査で悪性腫瘍が疑われる場合や、腫瘍が増大してきている場合、また、生検をするのが難しい場所に腫瘍がある場合などは、診断と治療を兼ねて腫瘍を切除する手術が勧められます。

縦隔腫瘍で最も多い胸腺腫のうち、20~30%の方がまぶたが重くなったり、手足に力が入らなくなる重症筋無力症を合併したり、1~2%の方が赤芽球癆(せきがきゅうろう)と言う貧血を合併することがあります。また、低ガンマグロブリン血症の合併もまれにみられます。

そのため、それらの検査中に胸腺腫が見つかることもあります。

心膜嚢胞、胸腺嚢胞、気管支嚢胞など:
時間とともに大きくなるもの、圧迫症状があったり、炎症を合併する可能性がある場合は手術が適用されます。

神経鞘腫などの良性充実性腫瘍:
基本的には、診断/治療のための手術を行います。

胸腺腫:
周囲に浸潤のないものでは摘出は容易ですが、周囲の臓器に浸潤するものでは合併切除が行われます。

広範囲に浸潤している症例においては化学療法、放射線治療を行った上で切除の可能性を考えます。

悪性胚細胞性腫瘍、悪性リンパ腫:
生検で診断し、抗がん剤治療を行います。

詳しくは専門家にお尋ねください。

縦隔腫瘍の種類や進行度によって、治療方法が異なりますが、良性腫瘍の場合は小さな切開の内視鏡(胸腔鏡下手術)で手術が行うことが多いです。
当院では腫瘍が小さい場合や、周辺の臓器に浸潤を伴わない場合(臓器に広がっていない時)は、積極的に胸腔鏡下手術を行っています。

しかし、大きな腫瘍や周囲の臓器まで広がった腫瘍の場合は、胸の中止にある胸骨を縦に切開した「開胸手術」が必要となることもあります。
また、悪性腫瘍の場合には手術・放射線治療・抗がん剤治療のいずれか、または、これらを組み合わせた治療が行われます。
健康診断で縦隔腫瘍が疑われたときは、呼吸器の外来をご受診ください。

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