人工膝関節置換術

  関節のしくみ

膝の関節は3個の骨でできています。すねの骨(脛骨)の上に太ももの骨(大腿骨)が乗っています。
膝を曲げたり伸ばしたりすると、太ももの骨の丸くなった端の部分がすねの骨の上にある比較的平らな面の上で回転したり、横滑りをしたりします。
そして、膝の「皿」(膝蓋骨)と呼ばれている3個目の骨は、膝の構造を整える筋肉とつながっています。膝蓋骨は、それらの筋肉にかかる緊張を減らす「てこ」の役割を果たしています。


  関節疾患について

膝が痛む主な原因として、次に挙げる関節疾患があります。

変形性関節症

健康で正常な膝関節において、膝の曲げ伸ばしは半月板や軟骨がクッションとなり、痛みを生じません。
しかし、加齢などによりクッションが磨り減ったり傷ついたりすると、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)がこすれあって、痛みや運動障害を招く病気、変形性関節症となります。
変形性関節症の国内における総患者数は、約95万人(男性35%、女性65%)と推計されます。
受療者率は、どの年齢層においても女性の方が高く、男女とも50歳前後から増加し、70歳代後半がピークとなります。

関節リウマチ

関節リウマチのような関節炎では、滑膜が炎症を起こします。放出された化学物質が原因で炎症が起こり、この化学物質が滑膜を肥厚させ、関節の軟骨や骨を破壊します。滑膜の炎症は関節の痛みや腫れを引き起こします。
関節リウマチの国内における総患者数は約42万人(男性18%、女性82%)と推計されます。
受療者率は、どの年齢層においても女性の方が高く、男女とも40歳前後から増加し、70歳代前半がピークとなります。

※「厚生労働省 統計データベース 2002年」より引用

治療法は?

関節疾患の場合でも、程度が軽い場合は、投薬や理学運動療法といった保存的療法で症状を和らげることができます。
ただし、痛みが継続する場合や、極端な変形で歩くことができなくなった場合、また関節リウマチが進行した場合には、人工膝関節置換術などの手術療法が必要になります。


  人工膝関節置換術とは

関節疾患の場合でも、程度が軽い場合は、投薬療法・注射といった保存的療法で症状を和らげることができます。
ただし、痛みが継続する場合や、極端な変形で歩くことができなくなった場合、また関節リウマチが進行した場合には、人工膝関節置換術などの手術療法が必要になります。

人工膝関節置換術とは、傷ついた膝関節を、関節の代替として働くインプラントと呼ばれる人工膝関節部品に置き換える手術です。通常、医師は特殊な精密器具を使って3個の骨の損傷面を取り除き、そこへ代わりのインプラントを固定します。

大腿骨面は、元の骨とほぼ正確に一致する丸みのある金属コンポーネントと置き換えます。脛骨面は、金属コンポーネントとなめらかなコンポーネントと置き換えます。

このコンポーネントは、超高分子量ポリエチレンという素材から作られ、軟骨の役目を果たしています。膝蓋骨の裏面も、同じポリエチレン製のインプラントと置き換える場合があります。

使用する膝関節部品は障害の程度によって異なります。
( 程度が比較的軽い場合は骨の表面だけを削って置き換えますが、膝関節の高度な破壊が進み、障害が著しくなると、複雑な膝関節部品が必要になります。)


  リハビリテーション

リハビリの目的

関節の安定を保つ役割を果たしている筋肉や腱は、動かさないとすぐに弱ってしまいます。
リハビリを行うことによって、筋肉を強くし、また、術後の拘縮(固まって動かしにくくなること)を防いで、早く日常生活へ復帰することができます。

開始時期

大体手術の翌日~4日目までにリハビリを開始します。

リハビリの種類

病室で・・・

  • 持続他動運動器(CPM)を使って膝の曲げ伸ばしを行う訓練
  • 足を垂直にあげるなど簡単な運動
  • 歩行器を使った歩行訓練

リハビリ訓練室で・・

  • 平行棒を使った歩行訓練
  • 杖を使った歩行訓練
  • 階段を昇る訓練

リハビリのプログラム例

膝を伸ばしたまま、ベッドに座ることができます。膝の経過が良好であれば、CPMを使って、ゆっくり膝を曲げ伸ばしします。

ベッド上で足に力を入れるなど簡単な運動を続けます。この頃には、看護士や理学療法士の介助で車椅子に乗ったり、手洗いに行けるようになります。

リハビリ訓練室で本格的なリハビリ

平行棒を使った歩行訓練

歩行器を使った歩行訓練

杖を使った歩行訓練

階段を昇り降りする訓練